スーパーで、お店で、商品パッケージに付いているたくさんのマーク。緑色だったり、カエルだったり、人のシルエットだったり…。「このマーク、何?」「どういう意味があるんだろう?」ふと、そんな風に気になったことはないでしょうか。
健康のため、環境のため、子どもたちの未来のために、できることから何か始めてみたいけれど、情報がありすぎて何から見れば良いか分からない。そんなあなたの「気になる」という気持ちに寄り添いながら、この記事では普段の食卓でよく見かける、食品に関する認証マークについてお話しします。
マークの「色」や形が教えてくれるのは、単なる品質だけではありません。そこには、安全への配慮、自然との関わり、遠い国の生産者さんの笑顔など、見過ごされがちな大切な価値や物語が隠されています。
難しい知識は不要です。マークの意味を少し知るだけで、いつもの買い物の風景が、きっと新しい発見に満ちたものに変わるはず。「知る前」と「知った後」で、モノの見え方、そして世界の色が違って見えるかもしれませんよ。完璧を目指すのではなく、できることから、あなたのペースで大丈夫です。食品のマークが持つ優しいヒントを見つけにいきましょう。
「このマーク、何?」買い物のときに感じる小さな疑問

スーパーで野菜を選ぶとき、あるいはコーヒー豆のパッケージを見るとき…ふと目に留まる、見慣れないマーク。緑色の四角いマーク、木の上にいるカエル、握り合った手…形も色も様々です。「なんとなく体に良さそう」「環境に優しそうかな?」と感じることもあれば、「結局、何が違うんだろう?」「本当に信頼できるのかな?」と疑問に思うこともあるかもしれません。
これらのマークは、「認証マーク」や「エコラベル」などと呼ばれ、その商品やサービスが特定の基準を満たしていることを証明するものです。私たちの日常にあるこれらの小さなマーク一つひとつに、私たちが普段の買い物では見過ごしてしまいがちな、大切な物語や情報が込められています。
そもそも認証マークって、なんのためにあるの?
なぜ、わざわざ商品にこのようなマークを付ける必要があるのでしょうか?その目的はいくつかあります。
信頼性の証明
認証マークは、第三者機関が、商品やサービスが特定の基準(例:環境への配慮、労働者の権利保護、有機栽培の基準など)を満たしていることを客観的に評価し、保証していることを示します。これにより、消費者は企業の主張だけでなく、信頼できる機関のお墨付きとして商品を選ぶ手がかりを得られます。
情報を分かりやすく伝える
商品パッケージには、限られたスペースしかありません。認証マークは、複雑な情報を記号として分かりやすく伝える役割を果たします。マークを見るだけで、「環境に配慮して作られた商品なんだな」「開発途上国の生産者さんを応援する商品なんだな」といった大まかな情報を瞬時に把握することができます。
企業や生産者の取り組みを応援する
認証マークが付いた商品を選ぶことは、その基準を守ってものづくりをしている企業や生産者を応援することに繋がります。消費者の意識的な選択を通じて、環境保護や社会的な公正さを重視する取り組みがより広く社会に広がっていく後押しになります。
つまり、認証マークは、私たち消費者が「どんなものを選ぶか」を判断するヒントを与えてくれる存在です。
そして私たちが意識的に商品を選ぶことが、見えないところで地球環境や社会に良い影響を与える可能性を秘めている、ということなのです。
暮らしでよく見かける、代表的な認証マークを見てみよう(食品編)
ここでは、私たちの食卓に並ぶ食品に関する認証マークの中から、特に代表的なものをいくつかご紹介します。それぞれのマークが持つ「色」や「形」に込められた意味、そしてそれが教えてくれる価値や物語を見ていきましょう。
有機JASマーク

日本で「有機」や「オーガニック」と表示された農産物や加工食品に必ず付いているのが、この緑色の丸いマークです。日本の有機食品の信頼性を保証する、最も基本的なマークと言えるでしょう。
どんなマーク?
太陽と雲をイメージしたデザインの下に「有機 JAS」と書かれています。農林水産省が定めた厳しい基準(農薬や化学肥料に頼らない栽培方法、遺伝子組み換え技術を使用しないなど)を満たし、国に登録された第三者機関の認証を受けた事業者だけが表示できます。認証を受けていないものが「有機」「オーガニック」と表示することは法律で禁止されています。
何がわかるの?
- 化学物質に頼らない栽培:
化学的に合成された農薬や肥料に原則として頼らずに、土壌の性質を活かし、自然の力を借りて作られた農産物であること。 - 環境への配慮:
農薬や化学肥料の使用を減らすことで、土壌や水源の汚染を防ぎ、そこに暮らす小さな生き物たち(生物多様性)を守ることにも繋がる取り組みであること。 - 加工食品の基準:
有機農産物を95%以上使用し、使用できる添加物も厳しく制限されるなど、加工の工程でも基準を満たしていること。
有機JASマークが付いた食品を選ぶことは、私たちの体だけでなく、日本の畑や自然環境にも配慮した選択に繋がります。このマークの緑色を見るたびに、健全な土壌や、そこで育つ力強い作物の様子が思い浮かぶかもしれませんね。
有機JASマークは日本の有機食品を選ぶ際の重要な目印ですが、実はこのマークだけでは分からないこともあります。(この点は、別の記事でさらに詳しくお話しする予定です。)
【参考:有機JAS特設ページ|農林水産省)
レインフォレスト・アライアンス認証

カエルがシンボルのこのマークは、熱帯雨林の保護と、そこで暮らす人々(農園の労働者や地域住民)の持続可能な生活や労働環境を両立するための認証です。コーヒー、カカオ(チョコレートの原料)、お茶、バナナなどの熱帯の農産物を使った商品でよく見かけます。
どんなマーク?
緑色の丸の中に、木の上にいるカエルのシルエットが描かれています。なぜカエルなのでしょう?カエルは、健全な環境、特に水辺の環境が守られていることの指標となる生き物として知られているからです。このマークには、豊かな森とそこに生きる命を守りたい、という願いが込められています。
何がわかるの?
- 森を守る農業:
熱帯雨林の森林破壊を防ぎ、そこに暮らす様々な生き物たち(生物多様性)を守りながら、持続可能な形で農業が行われていること。農薬や化学肥料の使用を減らす努力も行われています。 - 人々の暮らしと権利:
農園で働く人々の安全や健康に配慮し、公正な賃金や労働条件が守られていること。児童労働や強制労働がないことも基準に含まれます。 - 地域社会への貢献:
農園がある地域の学校や医療施設への支援、地域経済の活性化など、地域社会全体の持続可能性にも貢献する取り組みが行われていること。
レインフォレスト・アライアンス認証のカエルマークが付いた商品を選ぶことは、遠い国の熱帯雨林を守り、そこで働く人々がより良い暮らしを送れるように支援することに繋がります。一杯のコーヒーやチョコレートが、地球の裏側の森や、そこで働く人々の笑顔と繋がっていることを教えてくれるマークです。このマークを見るたびに、緑豊かな森の風景や、そこで働く人々の顔が思い浮かぶかもしれませんね。
【参考:「レインフォレスト・アライアンス認証」とは何か?|Rainforest Alliance】
フェアトレード認証

公正な貿易を通じて、開発途上国の弱い立場にある生産者や労働者の生活改善と自立を目指す国際的な認証です。コーヒー、カカオ、バナナ、コットン製品、紅茶、砂糖など、様々な商品で見かけます。
どんなマーク?
国際フェアトレードラベル機構(FLO)が定めた、青と緑の色合いで握り合った手をイメージしたロゴと「FAIRTRADE」の文字が入ったマークが一般的です。このマークの色には、青空や緑の大地、そして人々の温かい繋がりが表現されているのかもしれません。
何がわかるの?
- 公正な価格と安定した取引:
生産者に対して、適正で安定した価格(フェアトレード最低価格)が保証され、長期的な取引が行われていること。これにより、生産者は安心して生産に取り組めます。 - 社会的な配慮:
児童労働や強制労働がなく、安全な労働条件が守られていること。男女平等や差別撤廃なども基準に含まれます。 - 環境への配慮:
持続可能な農業を奨励し、環境に配慮した生産方法に取り組んでいること。 - 地域社会への投資:
フェアトレードの取引を通じて得たプレミアム(奨励金)が、教育、医療、インフラ整備など、地域社会の発展のために生産者組合によって民主的に使われていること。
フェアトレード認証のマークが付いた食品を選ぶことは、私たちが普段の買い物をすることで、開発途上国で暮らす人々の貧困削減や、より尊厳のある暮らしを応援することに繋がります。「誰かの笑顔につながる買い物」という視点を与えてくれる、温かいメッセージを持ったマークです。
その他の食品関連マーク


上記で紹介した以外にも、食品に関するマークはいくつか存在します。例えば、特定の地域で生産されたことを示す地理的表示保護(PGI)制度のマーク(地域名とGIマークが表示されています)や、特別栽培農産物の表示ガイドラインに沿ったもの(節減対象農薬の使用回数や化学肥料の使用量が地域の慣行レベルより5割以上削減されていることを示す)などがあります。
これらのマークも、その食品が持つ背景やこだわりを知るための大切なヒントになります。それぞれのマークが持つ意味や物語に、少し立ち止まって関心を向けてみることが、「知る」ことの第一歩です。
大切なのは、それぞれのマークが何を意味しているのか、少し立ち止まって関心を持ってみることです。その一つ一つに、食の安全や環境、社会への配慮といった様々な想いや努力が込められています。
たくさんのマークがあるけれど…どれを見ればいいの?

ここまでいくつかの代表的な食品に関する認証マークをご紹介してきましたが、「こんなにたくさんあるの?」「どれを選べばいいか余計に分からなくなったかも…」と感じてしまうかもしれません。でも、心配しないでください。すべてのマークに詳しくなる必要も、すべてのマークが付いている食品だけを選ぶ必要もありません。
大切なのは、「認証マークは、私たちが食品を選ぶための『ヒント』をくれるもの」という視点を持つことです。完璧な「正解」を探すのではなく、あなたの「気になる」という気持ちを入り口にしてみてください。
あなたの「気になる」から始めてみよう
例えば、「普段飲むコーヒーやチョコレート、どこで作られているんだろう?」と産地に興味があるなら、レインフォレスト・アライアンス認証やフェアトレード認証が付いた商品を探してみる。「せっかくなら、日本の畑や自然環境に優しいものを選びたいな」と思うなら、有機JASマークに注目してみる。
このように、あなたの興味や関心に合わせて、気になるマークから一つずつ意味を知っていくのがおすすめです。今日の買い物で一つだけ、いつもと違うマークに目を向けてみる、あるいはこの記事で紹介したマークが付いた商品を一つ試してみる、といった小さな一歩から始めてみることを提案します。
「知る」ことから始まる、社会や環境と「つながり」
食品の認証マークについて少し知ることで、これまで何気なく見ていた商品パッケージが、少し違って見えてくるかもしれません。「あ、このマーク、この記事で読んだカエルのマークだ!遠い国の森と繋がってるんだな」なんて発見があるたびに、買い物がちょっぴり楽しくなるはずです。
認証マークは、あくまで一つの基準であり、食品の価値を全て決めるものではありません。マークが付いていなくても、こだわってものづくりをしている素晴らしい食品はたくさんあります。大切なのは、マークの有無だけで判断するのではなく、様々な情報や自分の感覚を合わせて、納得のいく選択をすることです。
でも、マークがあることで、食品の背景にある「見えない努力」や「未来への配慮」に気付く手がかりを得られるのも事実です。それはきっと、食の安全や環境問題、社会的な課題といった、これまで少し難しく感じていたことが、ぐっと身近に感じられるきっかけになることもあります。
この「知る」という経験が、あなた自身の価値観や、食を通じて暮らしで大切にしたいことは何か、を考えるきっかけになるはずです。そして、それはきっと、あなたらしい「安心」の選び方に繋がっていくでしょう。
おわりに:食品のマークをヒントに、食卓と世界のつながりを見つけてみよう
この記事では、普段の食卓で出会う食品に関する認証マークについて、その意味や役割を一緒に見てきました。
認証マークは、難解なものではなく、私たちが日々の買い物を通じて、自分自身、そして地球や社会との豊かなつながりに気付くための、優しいヒントになるものです。
完璧な選択を目指す必要はありません。「へぇ、こんなマークがあるんだな」「今度これを選んでみようかな」という、あなたの小さな「気付き」や「気になる」という気持ちを大切にしてください。マークの「色」や「形」に隠された意味を知ることは、いつもの食卓を、ほんの少しでも新鮮で、発見に満ちたものにする小さな一歩になるはずです。
さあ、次はどんな食品のマークに目を向けてみますか。 あなたの「できること」から、始めてみましょう。
